本稿は日田鵜飼を観覧した際の見聞ではなく、2022年夏に日田鵜飼の鵜匠宅を訪問した際の取材記録です
2022年夏。6年ぶりに日田を訪問する機会に恵まれた。2016年に初めて日田鵜飼を観覧したときの感想は正直ポジティブなものではなかった。その理由は
というものだった。もちろん船上での食事や遊覧はとても素晴らしく船遊び体験としてはすごく素敵なものだったことは間違いない。ただ「鵜飼」を主目的出来たものにとってはもの足らなかったというのが本音である。
また、前回の訪問後も何度か問合せをしたが、問合せは旅館組合が対応していた。鵜飼自体を管理しているわけではないがこの旅館組合のご担当者による対応はとても丁寧で迅速で気持ちが良いものであることもちゃんとお伝えしておきたい。
6年経った2022年夏。再び日田を訪れるチャンスがあった。
日田に行けると分かった瞬間、ホテルを探し予約しようとしたところ、鵜飼の予約ができるホテルが1件(亀山亭ホテル)になっていた。
加えて、そのホテルで予約をしようとしたら当該日に鵜飼の予約ができない。
後で分かったことだが、
というのが現状(2022年8月)だそうだ。災害があったりコロナ禍の影響だったりして年々お客さんが減ってきている現状を突きつけられました。
そんな中、ちょっとしたきっかけで日田市の職員の方につながり、当日都合がつけば鵜匠宅に案内して頂けることになった。
その後訪問まで何度もメールでやりとりをさせて頂く中、自分自身が怪しい人間ではないことを知って頂くと同時に、市のご担当者が鵜飼に関して熱い情熱をもっていらっしゃることが伝わってきた。
そういえば、最近日田観光協会からの発信が増えているなと感じていたところだったので、妙に納得した。
訪問できる日を指折りながら待つことにした。
そして迎えた当日。約束の時間は夕方なのでそれまで日田市駅周辺をしばし散策。
作者の故郷が日田市ということで町とコラボしています。スマホゲーム、スタンプラリー、コンシェルジュ、AR、イベント、スポットなど至る所に進撃の巨人の何かに出会います。
日田といえばやきそばという薄ーい知識の私に優しく丁寧に教えて頂いた想夫恋の三本松店は元々は本店。パリパリの食感も味も幸せでした。関東、近畿、東海のお店に加え、オンラインショップもあるみたいなので後からも楽しみ。
日田市複合文化施設AOSE(Area Of Social Education)
鵜舟を作る職人がいないと、鵜舟を新しく作ることができません。他地域では10年が限界という所もあります。
日田鵜飼の鵜舟は、金属などを使って補強・補修しながら使い続けています。
鵜の首と胴体に付ける紐。「シメ」と呼びます。他地域では「タスキ」とも呼ばれています。真ん中の「こぶ」の部分に手縄(ここではてなわ)をつなぎます手縄は二広半(約4メートル)です。
日田の鵜匠さんも自身で鵜を飼っています。本業をもっているので仕事終わり、鵜飼前後の毎日の世話が欠かせません。でもそうすることで、放っておいても自ら鵜かごに入ったりしますが、食事の時間が遅れると怒って騒ぎます笑
脂ののりすぎたホッケはダメです。
以前はカーバイトも使っていたそうですが、現在は薪を使って篝を炊いています。赤松は費用も高いため使っていません。そのため雨が降るような日は篝の代わりに電気を使っています。
鵜匠の衣装として必須アイテムの腰蓑・「本当はなくても困らない笑」そうですが、独特の編み込みで装飾されています。他地域のスタイルを積極的に取り込んでオリジナルに進化してきましたが今は鵜の病気情報以外は他の地域は参考にはしていないそうです。
鵜飼ご当地あるあるの、鵜飼マンホール。日田にもしっかりとありました。
よく見ると鵜飼のデザインが日田鵜飼のスタイルと若干異なるような気もしますが。でもこれを見るとほっとします。
色々とお話を聞かせてくださったのは、鵜飼保存会代表の西尾和宏さん。西尾分家の鵜匠3代目です。長年3人の鵜匠が日田の鵜飼を続けてきましたが、残念ながら現在は2名になってしまっています。
西尾和宏さんが代表になってからは、日田市の文化財保護課と連携して鵜飼の情報発信や取材対応などにも積極的に応対し、鵜飼文化そのものを広める活動もされています。
現在はまだ鵜飼のポスターやグッズはありませんが、来年5月20日の川開きの案内には「鵜飼」の文字がしっかり載っていることを期待したくなります。
現在も日田鵜飼は、ホテルの運行する船上の宴会の最後に登場して鵜飼を披露・紹介するスタイルですが、これでは「本当の鵜飼を見せられていない」とおっしゃいます。
三隈川が庄手川、隈川、三隈川の三つに分かれる場所で行っていますが、そこよりももう少し上流の日田鮎やな場あたりが良いそうです。ここで川岸から鵜飼を見学できるようなことができないかと考えているとのこと。お披露目会があれば是非行ってみたいです。
「鵜飼はなくなっていくものだと思うよ」。観光客数の低下、船大工、道具職人、そして鵜匠の後継者がどんどんといなくなっていく現状を嘆くのではなく現実の問題として直視した西尾さんの言葉は重いものがあります。「だからこそ大事にしっかりを鵜飼をやっていかないといけない」伝統を受け継ぐ責任と覚悟で西尾さんはそう語ってくれました。
文化はある時間で切り取ってしまうとそこで停止して、その先は進化・変化していくことがはありません。日田鵜飼は今は切り取って止めてしまうものではないと思います。鵜飼を愛して、その魅力を知る人が一生懸命になってそれが「続いていく」ための努力をしています。
その中で情報発信はとても大切。全国の鵜飼関係者は同じ問題を抱えています。1箇所だけの力で解決に向けて苦労するのではなく、横の連携をしながら、まわりを巻き込みながら一つずつ解決していくことが必要なのだと言うことを改めて感じました。
最後に、今回の訪問に際して大変なご尽力をしてくださった、日田旅館組合 日田温泉共同組合事務局の岩崎様、日田市 教育庁文化財保護課 文化財管理係の今田様にこの場を借りて深く感謝を申し上げるとともに、また必ず日田にお伺いすることをここに約束致します。ありがとうございました。
■日田鵜飼■
鵜飼事業主体:鵜飼保存会
実施河川名:筑後川(通称三隈川)
過去の乗船実績:H30年 11,798人、R1年 8,676人、R2年 2,559人
実施期間:毎年5月20日~10月末日(予約状況による)
鵜匠の人数:2名
観覧船:旅館組合加盟のホテル・旅館の船(R4年は亀山亭ホテルのみ)
観覧料:ホテル・旅館設定の料金