鵜飼は渡り鳥である鵜の特性を漁に応用した古来からある漁法です。日本書紀や古事記にもその記述があります。
古くは生活のために行われていましたが、今は観光業として実施されています。
日本以外では中国でも実施されており、古くはヨーロッパでも16-17世紀に行われた記録がありますが、ヨーロッパでは鷹狩りのような貴族の道楽の様だったようです。
現在は日本では11箇所で鵜飼が行われています。また年に1回のイベントとして鵜飼を行っている箇所も数か所存在します。
最も盛んな岐阜市の長良川鵜飼は最盛期(1973年)は34万人近くの観光客がいましたが、現在(2015年実績)では103,927人と伸び悩んでいます。
また、観光業としての限界、鵜匠の高齢化、後継者不足が原因で鵜飼を辞めてしまった地域もあり、問題となっています。
鵜飼いサミットは1994年に岐阜県岐阜市で第1回が開催されて以降、毎年全国の鵜飼開催地および関連場所にて実施されてきました。
そして第20回を迎えた2013年を最後に移行は隔年開催となりました。
第1回開催時の設立趣意書には「伝統ある無形文化財”鵜飼”を保存継承するとともに観光資源としてさらに発展させるため、関係者が一堂に会し現状の意見交換、共通する問題点の発掘および改善案について話し合い、連帯して鵜飼の振興をはかる。」とあります。
第1回 1994年5月12日~13日 岐阜県岐阜市 (参加者120人)
第2回 1995年10月11日~12日 岐阜県岐阜市 (参加者105人)
第3回 1996年8月31日~9月1日 和歌山県有田市 (参加者130人)
第4回 1997年8月25日~26日 愛知県犬山市 (参加者154人)
第5回 1998年9月2日~3日 広島県三次市 (参加者140人)
第6回 1999年9月3日~4日 愛媛県大洲市 (参加者139人)
第7回 2000年9月3日~4日 岐阜県関市 (参加者160人)
第8回 2001年8月29日~30日 山口県岩国市 (参加者140人)
第9回 2002年9月2日~3日 京都府宇治市 (参加者130人)
第10回 2003年9月3日~4日 福岡県杷木町 (参加者120人)
第11回 2004年9月8日~9日 広島県三次市 (参加者131人)
第12回 2005年5月26日~27日 愛知県犬山市、岐阜県各務原市 (参加者120人)
第13回 2006年8月31日~9月1日 京都府京都市 (参加者120人)
第14回 2007年9月4日~5日 愛媛県大洲市 (参加者141人)
第15回 2008年9月4日~5日 山梨県笛吹市 (参加者77人)
第16回 2009年10月1日~2日 岐阜県岐阜市 (参加者160人)
第17回 2010年4月8日~9日 茨城県日立市 (参加者145人)
第18回 2011年9月2日~3日 広島県三次市 (参加者150人)
第19回 2012年10月25日~26日 山口県岩国市 (参加者240人)
第20回 2013年10月15日~16日 岐阜県岐阜市 (参加者270人)
第21回 2015年7月28日~29日 岐阜県関市 (参加者100人)
第22回 2017年6月5~6日 愛媛県大洲市 (参加者XXX人)
第23回 2019年 京都府京都市
鵜飼が日本の伝統漁法だということは間違いないのですが(中国から伝わったとしても独自の進化を遂げている)、伝統と聞くと私たちはすぐに「守るもの」と思いがちです。しかし、その伝統の真ん中にいる方から見れば「守る」というよりはむしろ「続けていく」ことが頭にあるそうです。
芸能ではなく生業としての鵜飼を続けてきた人たちにとっては昨日と同じ、1300年かそれ以上前と同じように鵜飼を続けていくことが大切なのだといいます。まさに目から鱗です。
生業として続けてきているからこそ、様々な変化をしています。
中国から伝わったのが「放ち鵜飼」だったとしても現在放ちを行っているところはありません(宇治には期待)。
生業であるからこそ、その時代時代に合わせて変化していくことが大切なのです。
現在は「観光鵜飼」となっているため、進化、変化よりも古の形が好まれるのかも知れませんが。
それでも、やはり元々が生業であったことを見失わないためには様々な変化を受け入れても良いのではないでしょうか。
卵からかえった雛から育てる、カワウを使う、足半ではなくサンダルを履く、ライフジャケットを着る・・・。
生業ではないですが、ドイツのオーケストラのコンサートマスターのいっていた言葉が頭に残っています。
”伝統とはおかしなものなんです。本来それはうまくいくはずのないものです。それは何を意味するかというとただの模倣です。
いつだって模倣に次ぐ模倣になります。何も起こりませんよ。それは明確です。
違う人が来て違う感じ方をするのですから、違った方向へと進むのです。そういうものです。”
byライナー キュッヒルさん。ウィーンフィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター。
2016年8月定年のため引退 (Eテレ 旅するドイツ語 第6回 ウイーンのカフェと音楽家インタビュー)
鵜飼とクラッシック音楽が違うことは誰が見ても明確なことです。
でも、どちらも「伝統」と呼ばれていることについての共通点があります。
「模倣」では何も起こらない ということ。
鵜飼を鑑賞するスタイルは鵜飼の開催地によって異なりますが、大きく分けて狩り下りスタイルと付け見せスタイルに二分されます。
一部では、観覧船(遊覧船)に乗らず、河岸から鵜飼を見るスタイルもあります。それぞれの特徴を以下に説明しますので、鵜飼い観覧の参考にして頂ければ幸いです。
観覧船が鵜匠の乗る鵜舟に併走して鵜飼を鑑賞するスタイル。
篝火の熱さ、鵜匠の声や息づかい、鵜の動きを間近で継続して鑑賞できるため迫力があり、鵜飼の一連の動きがよく分かる。
どの鵜匠(鵜舟)と併走するかで、その趣が異なる。
ダイナミックで迫力のある鵜飼いを見ることが出来る。
観覧船は河岸や川の中央辺りで停止し(他の観覧船と繋がっている状態もある)、鵜匠が鵜舟に乗って鵜飼をするのを眺めるスタイル。
鵜舟が観覧船の周りを回って、丁寧に見せてくれることが多く、また複数回船の前で披露してくれることも多いため、じっくりと鵜飼いを見ることが出来る。
本来の「漁」というよりは、「ショー」的な要素が強い。
ぎふ長良川鵜飼の場合は、6人全ての鵜匠の鵜飼いを順番に見ることが出来る
ぎふ長良川鵜飼では、天候不順や川の状態、観覧船の数や船頭の状況で当日判断される。
鵜飼観覧船乗り場の切符販売所でその日が狩り下りか、付け見せのどちらかが分かるようになっている。
※川岸からの観覧
観覧者は観覧船には乗らず、川岸に座ったりして鵜飼の様子を観る
料金が発生しないため,自由に観覧することが出来る。
※総絡み
複数の鵜舟が連携して、川魚を追い込んでいく漁法。
ぎふ長良川鵜飼のみで見ることが出来る。狩り下りの日であっても、総絡みは観覧船は停止した状態で観覧する。
鵜舟が等間隔(約10メートル)に並び、川の深いところ(右岸辺り) から左岸に向かって編隊をなして鮎を追い込んでいく。
鵜飼開催場所 | 観覧スタイル |
石和鵜飼(笛吹市) | 河岸からの観覧スタイル。徒歩鵜。 |
木曽川のうかい(犬山市) |
昼鵜飼、夜鵜飼共に狩り下り。 1艘の鵜舟に2艘もしくは3艘の観覧船が鵜舟の両側から観覧する |
小瀬鵜飼(関市) | 狩り下り |
ぎふ長良川鵜飼(岐阜市) |
狩り下りおよび付け見せ(その日の状況によって異なる)。 いずれの場合も最後は総絡みあり |
嵐山の鵜飼(京都市) |
付け見せスタイル。 縦に観覧船が繋がり、鵜舟は上流から下流、下流から上流と鵜飼を見せながら移動する |
宇治川の鵜飼(宇治市) |
付け見せスタイル 縦に繋がった観覧船の目の前をおよそ3往復しながら鵜飼を披露。 鵜舟と観覧船が非常に近く、細かいところまでよく見える |
三次の鵜飼(三次市) |
狩り下りスタイル。 最後は観覧船が繋がり、停止しその周りを鵜匠が鵜舟に乗って周遊する。 鵜飼中は「あなやり漁法」という3艘の鵜舟が連携して漁を行う |
錦帯橋のう飼(岩国市) |
付け見せスタイル。 縦に繋がった観覧船の周りを鵜舟が回りながら鵜飼を披露する |
大洲のうかい(大洲市) |
狩り下りスタイル。 大洲では「あわせ鵜飼」と呼ばれている |
日田鵜飼(日田市) |
付け見せスタイル。
船上レストランに見立てた観覧船が停止した状態で、観覧船の周りを鵜匠が |
筑後川の鵜飼(朝倉市・うきは市) |
狩り下りスタイル。 1艘の鵜舟に2,3艘の観覧船が両側から挟むような形で併走する。 ゆっくりと進むため鵜の細かい動きなどがよく見える。 |
(年1日の地域の祭り)蟹江町鵜飼祭り(蟹江町) | 川岸から観覧するスタイル |
(年1日の地域の祭り)売比河鵜飼祭り(富山市) | 川岸から観覧するスタイル |
(年1日の地域の祭り)十王祭り(日立市) | 川岸から観覧するスタイル(徒歩漁法) |
鵜を巧みに操る鵜飼の主役の一人鵜匠。長良川の鵜匠(ぎふおよび小瀬)は世襲制と言うことで男系の長男が継ぐことになっています。
しかしながら他の地域の鵜匠は、代々鵜匠の所もありますが観光事業として再立ち上げをしたところでもあり、世襲というような縛りはありません。
そのため、女性の鵜匠が活躍している地域もあります。
過去そして現在の女性鵜匠の活躍を簡単にまとめました。
初代女性鵜匠 :岩下都子さん(筑後川)。代々鵜匠の家に生まれ育った大ベテラン
初代と書いていますが、岩下さんのお母さんも鵜匠という話もあり(未確認)、初代ではないかも知れません
二代目女性鵜匠:佐々木 コズエさん(大洲)。専業主婦からの転身。現在は引退されています。
三代目女性鵜匠:澤木 万里子さん(宇治)。2002年デビュー。現在も宇治川の鵜飼を引っ張っています
四代目女性鵜匠:江崎 洋子さん(宇治)。2006年デビュー。現在も澤木さんと一緒に活躍されています
五代目女性鵜匠:石和鵜飼で活躍された女子高校生(2009年)。現在は活動はされていません
六代目女性鵜匠:稲山 琴美さん(木曽川)。2013年デビュー。大人気となりましたが、2015年産休。2016年育休で
2017年から昼鵜飼限定ですが復帰されました
七代目女性鵜匠:氏名非公開。錦帯橋の鵜飼(2014年)。現在は引退されています
八代目女性鵜匠:コリヴォー・ラリッサ・カテリンさん(嵐山)。2017年デビュー。アメリカと独を国籍に持つ初の外国人鵜匠